loser's howling for tomorrow

ネタバレ注意。小説、漫画、アニメ、ゲーム、音楽、お笑いのことなんかを書き殴っています

2018ベストアルバム(ごちゃまぜ)


いやー、「吉本の戸愚呂兄弟」こと金属バットはホンマに面白いですねえ。吉本はこんな才能しかないコンビを12年もほったらかしてたんか。アホな会社やなあ。



あ、話題まちがえた。


本題に入りましょう。
「2018年のベスト○○」音楽部門の第2弾、ベストアルバム部門です。
















というわけで2018ベストアルバムはMaison Book Girlの「yume」です。

数ある「楽曲派アイドル」の中でも特異な存在感をその身にまとう「現代音楽アイドル」、それが彼女達Maison Book Girlです。僕は二年ほど前から彼女らに並々ならぬ関心を抱いていました。なんせ楽曲の殆どが奇数拍子。なのになぜか耳に残る。といってもライブ行ってみたいと思うほどのめり込むこともなく、でも音源が出れば買う。という中途半端な状態が二年続いていて、このアルバムの楽曲「おかえりさよなら」のMVも半ば惰性で視聴しました。
これがまさかの全編4/4拍子という、自身らのアイデンティティーを崩壊させかねない「普通のリズム」の楽曲だったのです。とはいえそこらのアイドルポップスにはありえない、身にまとう空気はそのままに「普通のリズム」ならではのベタともいえるドラマティックさを演出する楽曲とMV。ちょっと言葉にならなくて、「新境地やな」とだけツイートしたことまで覚えています。


そしてその余韻もまだ消えきらないうちに発表された「狭い物語」のMV。前回ベストチューン編でも挙げた楽曲ですが、これが「おかえりさよなら」と打って変わっていつもにも増して奇天烈なリズム進行。7拍子ぐらいなら今までの彼女らの楽曲にもいくつもありましたが、この曲はA,Bメロサビがそれぞれ7,5,3とすべて奇数拍子な上に基本のリズムとウワモノと打楽器が全部違うリズムで鳴っているように聞こえるため、歌い手にとってものすごく難しい曲なんです。初めてイントロ聴いたときは「うわー、これ歌いこなせんのかぁ?」と不安になったりしましたが、歌いこなすどころじゃない、Maison Book Girlのあの空気を保ちつつ、今までにない熱さすら感じるエモーショナルな歌唱で一気に僕の鼓膜をぶち抜いてくれました。
そしてリリースされた全21曲(!)収録の2ndフルアルバム「yume」。
上記2曲でぐいぐい上げまくったハードルを余裕で越える、期待以上の傑作、いやそれ以上に自分にとって特別な作品になるかもしれないと思わされるほど素晴らしいアルバム。コンセプチュアルアートとしての完成度がえげつないぐらい高い上に、キーとなる10曲ほどがすべてシングルカットできそうなキャッチーさまで持ち合わせている辺り、「売れ線の芸術」というあり得ない形容をしたくなります。
とにかく凄い傑作。
2018年は本当に新曲、MV、シングル、EP、そしてとどめのこのアルバムに至るまで、Maison Book Girlの手のひらの上で転がされた一年だったように思います。






さて今回も次点以下のアルバムをいくつか紹介します。これまた恐ろしいほどの完成度で世に放たれた、USインディーロック、サッドコア、スロウコアの代名詞、僕が20年以上偏愛して止まないバンドの最新作、LOWの「Double Negative」です。
Maison Book Girlのもそうでしたが、これまたアルバム単位で聴かないとその凄みがわかりにくい作品と言えるでしょう。実験作であるが故に少し地味で意図が伝わりにくいのもマイナス点かもしれません。
ただ僕はこれ、一聴してやられました。ライブではちょっとしたポストロックばりのミニマル轟音ギターを鳴らしまくってたとはいえ、アルバム全編通してここまでエクスペリメンタルな音作りをしてくるとは。しかも付け焼き刃感がまったくなく、なんなら同じく2018リリースのOneohtrix Point Neverの「Age Of」なんかより全然実験的で、エレクトロ通過後のサイケデリアを感じさせてくれるんですから。
そして最終曲「Disarray」



これまでのLOWが持っていた儚げな美しさと新機軸のドローンやグリッチノイズが混じり合って深夜に爆音で聴いてるとうっかり召されそうになる名曲です。最後にこのキラーチューンを持ってくる構成も完璧。
リスナーや各メディアからの反応も頗る良いようで、派手なところでは、WARP RECORDSの「2018年の50曲」みたいなセレクションにロックバンドとして選ばれたのは、彼らの上記の曲「Disarray」とNine Inch Nailsの「God Break Down The Door」の2曲だけだったりしました。






お次はこれ。Twenty One Pilotsの「TRENCHです。アルバム1曲目の↑がとにかく格好いい。DFA1979なんかを思い出させるヘヴィーに歪みまくったベースのリフにまずトばされて、終盤のやけくそみたいなシャウトでもう降参。この一曲の中にストーナー風味のざらついた重さとチルウェイヴ的な線の細い歌心と激情ハードコアの熱さが共存しているというのは、これはもう文句なくヤバいなと。んで最初はこの曲ばかり聴いてたんですが、あれ、他の曲も曲調は散漫だけど、光るもんあるなあ、って思いながら聴いてる内にハマったもう一曲。



祝祭感はまるでアンダーワールド。でもサビで何度も歌い上げる「Don't Believe The Hype」はパブリック・エネミーのかつての大名曲のタイトル。つまりメッセージがあるということ。このあたり絶妙なバランス感覚だなあと思いました。
「TRENCH」というこのアルバム、今までより若干ロック寄りのアプローチが増えたのは確かだけど、『バランスとか知らん』とばかりにバラッバラの曲調なんですね。そこがいいとも言えるけど、アルバムとしての統一性は薄いので、年間ベストに選ぶのはちょっと違うなあということで。


さて、トップ3はこんな感じでしたが、まだもう少し紹介したい作品があるので、ずらっとアルファベット順に一口コメント(?)でお送りします。




A Perfect Circle/Eat The Elefant

待てど暮らせど新譜のニュースすら聞こえてこないTOOLの代わりによく聴きました。良作。




Alva Noto/UNIEQAV

'18年は坂本龍一氏とのコラボアルバムも出てましたが、僕はこっちの方が好きです。ドイツ人だからなのか、聴いてるといつもノイとかカンを思い出します。




Animal Collective/Tangerine Reef

実はあんまり好きじゃなかったバンドですが、このアルバムはいつもの奇天烈サイケ絵巻からポップさをバッサリ削ぎ落とした潔さが気に入りました。通して聴くのはちょいしんどいですが。




Beach House/7

いつもどおり良い、という感じ。目新しさはないけど好きです。このMVはちょっと狙いすぎ笑




Car Seat Headrest/Twin Fantasy

やっぱりUSインディーは最高だぜ!ちょっと地味だけどいい曲ばっか。ギターがめちゃくちゃいい。




Chris Dave And The Drumhedz/Chris Dave And The Drumhedz

ヤベエ奴があらわれたって思いました。ブラックミュージック界のドラムヒーロー。どこを切り取っても盛り上がる。'18年冒頭のリリースでしたが、なんだかんだずっと聴いてた気がします。




Deafheaven/Ordinary Corrupt Human Love

言わずと知れたポスト・ブラックメタルの雄。というかここまで来るとブラックメタル云々で語るのがアホらしくなってきます。ただのデフヘヴンのただの最高傑作。彼らには今後とも唯我独尊を貫いてほしいものです。どうでもいいですがジャケットに写っている謎の人物がアインシュタインの稲田くんにバリ似ててクソ笑いました。




Dirty Projectos/Lamp Lit Prose

大傑作だった前作からわずか一年でリリースされた本作はとにかく明るくてポップ。前作の重さが好きだったので拍子抜けしましたが、これはこれで悪くない。




Elvis Costello/Look Now

僕かてたまにはオッサンの聴くような音楽も聴くんです。いやいや大傑作ですよこいつは。近年の、というかここ15年ぐらいの間でのコステロの最高傑作かも。このオッサンがJ-POPに与えた影響って実はとんでもなく大きいんじゃないかと思います。




GoGo Penguin/A Humdrum Star

ジャガ・ジャジストとかESTの血を受け継ぐ所謂ポスト・ジャズバンドたち(たいして数はいませんが)の中では最も若く最も勢いのあるピアノトリオの最新作。同じように「アコースティック・エレクトロニカ」とか呼ばれていながら、ジム・オルーク周辺のいわゆる「シカゴ音響派」とはまったく違った印象。むしろ山本精一氏のバンドROVOなんかと似た感触。まだ化ける余地もありそうな将来性のある頼もしいバンド。(エスビョルン・スヴェンソンみたいに)早死にしないでほしい。(Jaga Jazzistみたいに)寡作になりすぎないでほしい。




Jack White/Boarding House Reach

ホワイト・ストライプスという肩書きもそろそろ必要なさそうな天才ギタリストのソロ最新アルバム。天才ギタリストと言いながら、以前のように弾きまくってるのはWhite Stripesの「Seven nation Army」を思い出させるこの曲だけなので、そういうの期待すると肩すかしかもしれませんが、僕はジャック・ホワイトがこのアルバムでやろうとしたことは、サイケデリックロックの新しい可能性かもしれないと思っています。




Kamasi Washington/Heaven and Earth

さきほど名前を挙げたGoGo PenguinやJaga Jazzistなんかに通ずるフィーリングを持ち合わせているんだけど、こいつらはその二組とは違い、根っこが真っ黒なフリージャズ。でもところどころ電子音が入ってるのが生粋のジャズっぽくなくて、そこが大好物ですね。




Mammoth Weed Wizard bastard & Slomatics/Totems

これは2バンドによるスプリットアルバムなのでここに挙げるのはためらいましたが、どうしてもMammoth Weed Wizard Bastardというアホすぎるバンド名を紹介したかったので。バンド名はこんなですが、女性ボーカルのストーナー・スラッジバンドとしては、最近売れまくってるCult of Lunaに勝るとも劣らない存在感を持ったバンドだと思っています。




Mount Eerie/Now Only

この人のMicrophones名義の頃のヤバさは、CD再生して20秒で気づく類いのヤバさだった。Mount Eerie以降は、聴き始めてから20分でやっと気づくヤバさ。どちらがどうとか野暮なこと言いたくないけど、僕はオーバー40のれっきとした老害なので、思い入れ補正たっぷりに今でもMicrophonesばかり聴いてしまうのでした。いいアルバムなんですけどね。このへんはもう好みでしょうね。




Philip H. Anselmo and The Illegals/Choosing Mental Illness as a Virtue

パンテラのボーカリスト、フィル・アンセルモのソロバンド(ロブ・ハルフォードのFIGHTみたいなもんか)の最新作なんですが、'17年リリースのscour名義がもろブラックメタルだったのに対し、こちらのイリーガルズ名義ではバリクソ激烈なブルータル/テクニカルなデスメタル。ついに50歳の大台に乗ったフィルのボーカリゼーションも、若いバンドの演奏も正直少し物足りない感がありますが、やっぱり僕らパンテラ直撃世代にとってフィル・アンセルモは特別なボーカリストなんです。最近ライブではパンテラのカバーばかりやってて食傷気味なので(そもそもパンテラの曲をツインギターでカバーするとかあり得ない)、ここらで一発イリーガルズとしての単独来日公演をブチ決めて往年のパンテラファンを唖然とさせてほしいものです。




Pinegrove/Skylight

USインディー界隈でいま僕がLOWの次ぐらいに注目しているバンドの最新作。最近のLOWにはあまり感じられない「アメリカーナ」で満載の、何年後かに名盤と呼ばれてもおかしくはない素晴らしいアルバム。前作と比べて内省的でおとなしいアレンジには賛否あるかもしれませんが、僕はどっちも大好き。




Soccer Mommy/Clean

オルタナ通過後のシンガーソングライター、と言ってしまえばそれまでなんですが、この冷め切った音の空気が逆になぜかエモーショナルに響く感じが自分的にはツボでした。とくにこの「Your Dog」はベストチューン候補にも挙がったぐらい好きです。20年ほど前にスマッシュヒット(笑)したパティ・ロスバーグの「Inside」という曲をなぜか思い出したりしました。なんか冷めた空気が似てる気がする。




Sons Of Komet/Your Queen Is A Reptile

狂乱のトライバル・ジャズ。こんなもん踊るしかないでしょう。ドラムとパーカッションの絶妙なアンサンブルがクソ格好いいです。




Tim Hecker/konoyo

美麗ドローンといえばこの人。今作はその美麗さと、いつも以上にエグいドローンノイズの落差が凄い。それでいて「konoyo=この世」というタイトルが示すように、メロディーや音色にどこか醒めた空気が漂っていて、アンバランス一歩手前とも言える大胆な作風に仕上がっています。




Yo La Tengo/There's a Riot Going On

Sugarcubes」や「Blue Line Swinger」といった過去の曲での轟音ギターは今作でもやっぱり聞こえてこない。もう封印しちゃったのかな。でもいいアルバムです。幽玄という表現がこんなに似合うバンドはいないでしょう。




というわけで2018年ベスト○○、アルバム編でした。予想以上に長くなってしまいましたが、これでもけっこうはしょったんです。勘弁して下さい。
それではまた。