loser's howling for tomorrow

ネタバレ注意。小説、漫画、アニメ、ゲーム、音楽、お笑いのことなんかを書き殴っています

サブリミナル・ミュージック・イン・マイ・ブレイン状態

毎日に喜びを見いだせません。
機械のように働いて飯食って寝てまた働いています。
これではいかん、いつも唇には歌を、と思い仕事中にもがんがんR.E.MやJellyfishなんかの懐かしい歌を口ずさんでいます。今期はあまりアニメを見ていないせいか、アニソンは少なめです。たまにシドニアのOPを高らかに歌い上げてたりはします。
そういう音楽にすがるような生き方をしていてふと思い出したのですが、みなさんにはこういう経験はないでしょうか?
たしかに知っているが思い出せない曲。なんならサビぐらいは口ずさめる、歌詞も断片的に覚えている、なのに曲名はおろかアーティストすらまったく思い出せない。で、思い出せないまま忘れてしまえるならそこまでのことで済むんだろうけど、なぜか忘れられずに何年も頭のどこかに居座り続けていて、なにかの拍子にメロディを思い出す。でもやっぱり誰のなんという曲なのか思い出せない。うろ覚えの曲名を検索しても、SHAZAMなんかのメロディ検索アプリで歌ってみても、ぜんぜんピンと来ない。もちろん自分が作った曲でもない。
たとえば味覚であったり嗅覚であったりがきっかけになって突然その曲を思い出す、などというプルーストの小説みたいなことが本当にあります。別に紅茶とマドレーヌでなくてもいい。
雨上がりのアスファルトの匂い。
夏の日のアイスキャンディのガリッとした冷たさ。
ひさしぶりに飲むジンジャーエールの後味。
たぶん単体ではないんでしょう。こういう季節で天気で体調で心境で、など様々なファクターが組み合わさって「ある曲」を思い出させる状況を作り上げるのだと思います。そこにどういった脳のメカニズムが働いているのか、ということに僕はあまり興味をいだけません。どうでもいいです。
ただ、そういう状況に陥ったとき、なぜだかものすごく感動します。その「ある曲」が、どうしてそういう状況になるまで思い出せなかったのか不思議なくらい、自分にとって大切な曲であることが多いからだと思います。あのときあの曲を聴いていなかったら今の自分はなかっただろうな、と思えるほどに大切なその曲をそれまで思い出せなかった自分への忸怩たる思いもありますが、8割方はポジティブな感動をもたらしてくれます。思い出させてくれてありがとう、なんて誰にとも知れずお礼を言いたくなったりもします。神はいないので神様ありがとうとは思いませんが。


さて、前置きが長くなりましたが、僕はこういう現象を「サブリミナル・ミュージック・イン・マイ・ブレイン状態」と呼んでいます。わかる人にはわかると思いますが、ナンバーガールの「サッポロ OMOIDE IN MY HEAD状態」というライブアルバムのタイトルと、あと色々何かしらからちょっぱってきた命名です。

ライヴ・アルバム ?サッポロ OMOIDE IN MY HEAD 状態

ライヴ・アルバム ?サッポロ OMOIDE IN MY HEAD 状態

まあ「名前などどうでもいい@寄生獣」という名言もあります。この際ネーミングはさておいてください。
要するに今回は、僕が過去に「サブリミナル・ミュージック・イン・マイ・ブレイン状態」のおかげで思い出した名曲を少し紹介してみようかという、ただそれだけの思いつきです。
田中ロミオの「犬と魔法のファンタジー」についてはたぶん次回書きます。


「世界でもっとも重要なロックバンド」と言われたこともある、アメリカの至宝R.E.Mの、おそらく日本ではトップ3に入るくらい有名な曲です。日本で有名なのは、村上春樹が著書の中でこの曲に言及しているからという理由もありますが、ここではとりあえず無視します。村上春樹が大嫌いだからです。お前みたいなもんにR.E.Mの何がわかんねん、とすら思います。
さておき、この曲はR.E.Mが2001年にリリースしたアルバム「REVEAL」に収録されていて、シングルカットされたのかどうかは思い出せませんが、手の込んだPVとこれまでにないポップな曲調により、日本ではいまいちパッとしなかったR.E.Mというバンドを一般的に知らしめた一助であったと記憶しております。一時はFMラジオなんかでもアホみたいにヘビーローテーションされていました。
でも僕は「REVEAL」というアルバムが好きになれず、この曲もまあいい曲だけどR.E.Mらしくないな、あんまり好きになれないな、ぐらいにしか思っていませんでした。前作「UP」があまりに地味なアルバムで、ああもう枯れちゃったのかこのバンド、なんて思っていたせいもあったのでしょう。
そんなわけでずっと記憶の片隅にしかなかったこの曲をふと思い出したのは、2003年頃、大阪アメ村の商店街をぶらぶらと歩いていた時のことでした。その当時の友人が働いていた服屋にふらっと立ち寄って、何を探すでもなく、たぶんTシャツか何かを物色していたとき、この曲のサビが耳に飛び込んできたのです。未だにどうしてなのかわかりませんが、ほとんど膝から崩れ落ちそうになるぐらい感動しました。この曲は凄い、どうして今までこの素晴らしさに気づかなかったのか、と。服を買うことなんかまったく忘れて、呆然と立ちすくんだまま聴覚だけが鋭敏になっていたことを昨日のことのように思い出せます。
しかしそのときの僕は間抜けなことに、曲名もアーティストも思い出せていなかったのです。絶対に知っている曲なのに!ああもどかしい!
で、その店員の友人に尋ねてみました。
「この曲なんやっけ?」
返ってきたのは、
「さあ?有線垂れ流してるだけやから」
というアホ丸出しの無責任な言葉。殺したろか!
いやもちろん殺しはしませんが、あまりに腹が立って店を出ました。今思えば、そのときすぐに有線のチャンネルを教えてもらって問い合わせれば曲名がわかったはずなのですが、そんなことにはまったく頭が回りませんでした。アホ丸出しなのは僕の方です。さらにアホなことに、僕はその曲を思い出すことをすぐにあきらめてしまったのです。今とは違い楽曲検索アプリなどもなく、とぼしい英語力では聴き取れる歌詞もほんの少しだけでしたし、これではどうにもならない、調べようがない、と思い込んでしまったのです。しかしこのときの僕は楽観的でした。こんな素晴らしい曲なんだから、すぐに思い出せるだろう、すぐにまたどこかで耳にすることがあるだろうと。
その後、何かの拍子にメロディを思い出しつつも、結局誰の何という曲かまで思い出せない、ということが何度もあって、メロディと曲名、アーティスト名が一致したのが、それから約3年も後のことでした。
2006年の夏、僕は再びアメ村の同じ店に立ち寄ろうと思い立ち、ぶらぶらと歩いていました。アメ村を散策するのがかなり久しぶりのことだったので、街並の変貌ぶりに驚きながらその店があった場所に辿りつくと、そこは空き地になっていました。
滅茶苦茶驚きました。
「嘘やろ?」と口に出していたかも知れません。え?なんであいつ教えてくれへんかったん?
急いで友人に連絡を取ろうと電話をかけてみると、
「その番号は現在使われておりません」
はあああっ!?
いやたしかに2年ぐらい会ってもなかったし連絡もなかったけど……ええええええっ!?
ショックでした。自分はあいつにとって携帯変更と共に切られてしまう程度の関係でしかなかったのか。会うことは少なかったけど、けっこう気の合ういい奴で、何度も飲みに行ったりもしてたのに。この服屋にも愛着があったのに。小さな店だけどアメ村の数あるセレクトショップの中でもちょっと異彩を放つ商品のチョイスがお気に入りだったのに。あとたしか3年ぐらい前にここで聴いたのがきっかけでR.E.Mの「Imitation Of Life」という曲の素晴らしさに気づけたのに。


…………って、あれ?


そうや!あの曲R.E.Mや!思い出したぁっ!!たまーに脳裏をよぎるあのメロディは「Imitation Of Life」やったんや!!
そこでようやく一致。さっきまで友人が音信不通になってしまったことを嘆いていたことなんて忘れてガッツポーズ。めでたしめでたし。
……とは流石にならず、友人が当時付き合っていた彼氏にも電話してみましたが、「俺らもう別れたから知らん」ととりつく島もない態度。どうもあまりいい別れ方ではなかったらしく、あまり突っ込んで訊くのもはばかられたので、とりあえず取り繕うように礼を言って通話終了。さてどうしたものかと思いながら、その当時まだ存在したアメ村のタワーレコードに立ち寄り、R.E.Mの「REVEAL」を買い求め、ウォークマンで「Imitation Of Life」をリピートしながら家路につきました。
以来、その友人とは未だに連絡がとれていません。
僕は友人を一人失ったかわりに、死ぬまで聴き続けるであろう名曲を思い出しました。
というとっちらかったお話。なんなんでしょうね、これ。書いててまったくカタルシスが得られません。思い出してスッキリ!な話のはずなのに。なんかすみません。


後日談。この日(2006年の7月下旬頃)CDを買ったアメ村のタワーレコードは、この直後2006年8月に閉店し、今ではその場所にまんだらけの場違いなビルがそびえ立っています。
アメ村のタワーレコードが大好きだったこと、あのときの友人のこと、色々な想いが交錯して嫌な気分になるので、まんだらけのビルはなるべく視界に入れないようにしています。

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